認知行動療法という治療法が流行(はやり)のようです。インターネットで検索しても多くの解説・書籍・治療機関などがヒットします。当院にも「認知行動療法を希望して来た」という人が時々いらっしゃいます。中には過度の期待を抱いてくる人もいます。大抵、そういう人は失望して帰ることになるのですが。
いったい、どんなものなのでしょうか?認知とは「考え方や物事の捉え方」のことで、行動は文字通りの意味です。簡単に言うと、物事の捉え方と行動を変えることで症状を減らしていく治療ということになります。例を挙げます。Aさんは40歳の男性で、5年ほど前にうつ病を発症し、過去2回ほど数ヶ月間の休職をしたことがありました。抗うつ薬による治療を続けていましたが、ここ2年ほどは長い休職はないものの、気分が滅入り、時々数日程度仕事を休んでしまう状態が繰り返されていました。前医での治療に限界を感じ、当院を受診されました。使用されていた抗うつ薬の量が不十分であったため、まずそれを十分に増やすことからはじめました。同時に、Aさんが不調になって会社を休むときはいつも決まったパターンがあることが分かりました。Aさんは完璧主義で、自分が納得できる段階にならないと、途中で上司に相談したりできないというのです。業務がうまくこなせているときは問題ないのですが、困難にぶつかると一人で限界まで抱えてしまうのです。するとどんどん仕事が溜まってきて処理できなくなり、出社するのが嫌になります。Aさんは不安を和らげるために酒を飲んで出社するという誤った対処行動をとり、アルコールの影響でますます仕事がこなせなくなるという悪循環が生じていたのです。Aさんには「中途半端な状態で相談すると、できないやつだと思われる」という認知があり、「限界まで一人で抱え込む」「つらさを酒で和らげる」という行動パターンがあった訳です。