<うつ病治療の落とし穴>

休養について 「何もしない」は正しいの?

仕事をしながら治療をしている方もいらっしゃるでしょうが、今回は休職が必要となった場合を取りあげます。うつ病について書かれた本を見ると、よく「なにもしないこと」と書いてあります。本当でしょうか?確かに、急性期(症状が激しく、また、短期間に変化しやすい時期)は「なにもしない」が正解です。「規則正しい生活」も後回しで、とにかく休むことです。うつ病の患者さんは休むことに罪悪感を覚えることがあるので「休むことが仕事です」と説得せよと、これもよく書いてありますね。しかし、少し症状が和らいでくると「なにもしない」はかえって辛くなるようです。この時期をどう過ごすとよいのでしょうか?

私は①生活リズムの回復、②自分の感覚を大切にする、をお勧めしています。

生活リズムが昼夜逆転などしてしまうと、回復にも遅れが出ますし、復職の際に苦労することになりかねません。生活リズムの回復のためには、まず、朝一定の時間に起きること。体内時計を調節しているメラトニンは起床時間によって分泌がコントロールされるので、ちゃんと朝起きないと夜に体が眠りに入る状態になれません。午前中に明るい光を浴びることも重要です。起きたら、歯磨き・洗面をして、窓際などで過ごすとよいでしょう。そして、3食とること。ただし、食欲が十分に回復していなければ、無理に「ちゃんとした食事」を採ることはありません。好きなもの、食べやすいものを少しでもおなかに入れる感じでよいのです。一日3回朝昼晩におなかに入れることが重要です。

自分の感覚を大切にするというのは、例えば次のようなことです。
患者Aさん「散歩ぐらいしてもいいでしょうか?」
「ちょっとは歩かないと、足が弱ってしまうようで心配ですか?」
患者Aさん「ええ」
「本当はどういう感じですか?歩きたいと思いますか?それとも『散歩ぐらいしなければいけない』、という義務感みたいな感じ?」
患者Aさん「義務感に近いです」
「それじゃ、やめてください。歩くこと自体がいいとか悪いとかではないんです。『今日は、ちょっと歩けそうだ、歩いてみようかな』、と思えればやってください。逆に、『~しなければいけない』、と考えてやるのはうつ病を悪くしますよ。ただし、まだまだ疲れやすいですから、疲れを感じたら休むようにしてください」

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