<うつ病治療の落とし穴>
環境調整 「励まさない」は正しいの?
環境調整といっても、その要は家族や職場の方々、つまり人間です。ですから、周囲の方が患者さんにどう接するかということと切り離せません。患者さんの訴え、特に悲観的な言動や、時にいらいらした態度にどう応えればよいのでしょう。
私は、まず周囲の方が力を抜くことが大切だと思います。うつ病について熱心に知識を集めるのはよいのですが、「励ましてはいけない」とか、そういうお題目だけに縛られるようでは力の入りすぎで、不自然になってしまいます。うつ病という病気であること、休養が大切であること、回復には時間がかかること、一進一退のような波があること、誰よりも不安なのは患者さん本人であること、これらを頭に入れて、普通の病気の人に対するのと同じように対応すればよいのです。
そうすれば自然と、休養が必要な人に「がんばれ」とは言えなくなるでしょう。あとは、ちょっとしたコツである「反射の技法(本人の言葉を繰り返す)」を使えばよいのです。
患者さんA「私にはこの会社でやっていく能力がありません」
上司Bさん「何を言っているんだ、そんな弱音を吐かずに頑張れ」×
上司Cさん「自分の能力に自信がなくなり不安なんだね」○
その上で、「今は病気だから、力が出せないだけ。しっかり治せばいいんだ。私は治ると信じている」と励まして?もよいでしょう。
環境調整のポイントを挙げると、「環境を変えるときには、時間をかける。段階的に行う」ということです。うつ病の患者さんは環境の変化に適応することが苦手です。発病時の部署が忙しいからといって、復職時に安易に異動を行うことは勧められません。特別な理由がなければ、一旦元の職場に戻し、業務負担を軽減して、時期を見て異動とした方がよいでしょう。「不調になった時の部署に来る前に、何年かやっていた部署なら本人も慣れているはずだ」と考えやすいのですが、現代の変化の激しい状況では、仕事の内容ややり方が以前とは変わっている場合も多く、「前にできた所でもできないなんて、やっぱり俺はだめだ・・・」などと思い込ませる結果にもなりかねません。
休んでいた生活から、出勤する生活への変化自体にエネルギーをとられるので、当初、業務にかけられるエネルギーは健康なときの5割程度と考えるべきです。もちろん出勤する生活に慣れてくれば、徐々に業務にかけられるエネルギーを増やしていけるでしょう。こういったことから、初めの2週間は半日出勤からはじめるなどの段階的復帰が望ましいわけです。ご本人にも事前に十分こうしたことを説明しておくことが大切です。